2017年12月17日日曜日

ドイツの組合は、世界無形文化遺産

 7章「住宅の未来」では、地元の電力公社が再生可能エネルギー化において住民参加を促すため、組合を設置したことについて書きました。その他再生可能エネルギーの分野では、住民が共同で発電施設を設置し、その事業者組織として組合を設立するケースが増えています。集合住宅でも、共同で発電、熱供給する住民組織として組合を選ぶケースも増えています。

 ドイツでは、伝統的に集合住宅を建設、管理する住民の自治組織として組合が普及しています。元々は、19世紀中頃に農家を支援する銀行として組合銀行が設立されたのが組合の最初だったといわれます。

 組合というのは、住民が連帯して自助組織として自己責任、自己管理を行なう組織です。住民の資金力とは関係なく、住民1人1人が資本の力から独立して自己判断、自己決定して住民自治を実現するためのものです。

 組合員は、組合員としていくら出資していようが、組合員1人には1票の投票権しか与えられません。出資額とは関係なく、組合員は常に平等に扱われます。それが、組合の一つの魅力です。

 ドイツでは、組合のアイディアが19世紀中頃から今も続いています。それがさらに、エネルギーの分野にも広がり、エネルギーを住民が自治管理する基盤にもなってきました。

 そのドイツの組合は2016年11月、ユネスコの世界無形文化遺産に認定されました。

 ぼくは、市民が再生可能エネルギーをより連帯して共同利用していく上で、組合がとてもたいせつな枠組みだと思っています。そこには、資本主義に変化をもたらすインパクトがあります。

まさお

2017年12月10日日曜日

送電網整備のコストは社会コストだ

 第2章で書いたように、ドイツではエネルギーを風力、太陽光などの再生可能エネルギーに転換することで、送電網の整備が重要な課題となっています。本文では、まずそのためにドイツでは約3兆円必要だと見積もられていると書きました。

 とてつもない高額の経費です。

 送電網の整備が必要になっている一つの大きな要因は、ドイツ北部の北海とバルト海でしか実現できない洋上風力発電です。そこで発電された多量の電気を南部に送電しなければなりません。そして、その洋上風力を進めるのは、洋上風力のように莫大なコストのかかる大きな設備を建設しないと大手電力が再生可能エネルギーに進出できないからです。

 本来、再生可能エネルギーは小型の発電設備を分散させ、地産地消するのが基本です。でもそれでは、大手電力がビジネスできません。送電網整備に莫大な投資をしなければならないのは、大手電力の救済措置だともいえると思います。

 もう一つ。鉄道や道路、空港は公共性があるからと、そのために国の予算から莫大な助成金が出されています。たとえば鉄道には、日本では毎年1500億円前後の助成金が出されています。たとえば新幹線網の整備には、これまでたくさんのお金が税金から出されてきました。さらに現在、採算性の見込みのないリニアモーターカー専用線の建設もはじまっています。

 道路においては、地方でまったく必要ない道路がたくさん建設され、そのためにたくさんのお金が助成されています。地方には建設業以外に産業がないので、土建業のために税金を出しているということです。

 高速道路も整備されてきました。それに伴い、高速で走る自動車も開発されてきました。その恩恵を受けてきたのは誰でしょうか。自動車メーカーです。

 空港にも、同じことがいえます。

 しかし、鉄道や道路、空港に税金から投資することに反対する声は、小さいのではないでしょうか。でも送電網と比較すると、どちらが公共性が高いのでしょうか。電力市場が自由化され、さらに自宅の屋根に太陽光パネルを設置して発電された電力を公共送電網に供給する市民が増えています。それを考えると、送電網の公共性は益々高くなっていくと思います。

 もう一つ考えてもらいたいのは、直接助成はされていないが、間接的に助成されているか、単に一般市民の負担になっているだけのコストです。

 道路が整備されて、自動車が増えています。同時に、それによる公害も増えています。その結果、ぜんそくなどの病気が増えています。そのコストは、一体誰が負担しているのでしょうか。国か一般市民です。

 こういうコストを社会コストといいます。社会コストは、実際の経済活動とは直接には関係ありませんが、経済活動の結果として発生する影響に対してコストが発生します。それが社会コストです。社会コストは、経済活動に対する隠れたコストだといっても過言ではありません。でもそのコストは、経済界は負担しません。

 福島第一原発の大惨事のコストは誰が負担しているのでしょうか。表向きは東電です。でも東電が国営化されている以上、そのコストは国家予算、つまりは納税者負担です。

 こうしてぼくたちは、社会コストという経済活動の隠れたコストを負担しています。

 でも、エネルギーがクリーンな再生可能エネルギーに転換されていくにしたがって、公害やその他の災害によって発生する社会コストは減っていきます。

 ぼくは、公共性の高さを考えると、送電網整備のコストはエネルギーをより広く市民のものにするための社会コストだと思います。なので、送電網の整備に莫大なコストがかかるからと単純に再生可能エネルギーに反対する意見は、理にかなっていないと思います。

 さて、みなさんはどう思いますか。

まさお

2017年12月3日日曜日

FIT電力にも、原発のための引当金を上乗せ

 本サイトでバックエンド引当金の問題を取り上げてきました。引当金は電力料金に上乗せされて徴収されており、ここでも関係あることなので、同ブログでも取り上げておきたいと思います。

 第1章で書いたように、ドイツではFIT電力は通常の電力として扱われています。つまり、火力発電、原子力発電された電力と区別されません。そのため、FIT電力にも原発の廃炉や最終処分のために積み立てておく引当金分が上乗せされている可能性があります。

 FIT電力を通常電力扱いすることでFIT制度による負担を全体に分配しているわけなので、原子力の負担も全体でという論理になりますかね。

 もちろんFIT電力に特化した発電事業者は引当金を上乗せする必要はなく、原子力発電する事業者だけが上乗せします。送電段階では、電力の区別はできなく、販売する電力にはすべてFIT電力が入っているとされる以上、送電会社から小売り業者に引き渡される段階では、FIT電力にも引当金が入ってしまっている可能性がかなり大きいと思います。

 特に原子力発電している大手電力は、当然のことながらFIT電力にも引当金を上乗せしていると思います。

 現在、電力商品に含まれているFIT電力の割合は平均で30%余りです。ぼくはグリーン電力を供給してもらっていますが、残りの70%弱はドイツでFIT外で発電されたグリーン電力か輸入グリーン電力(輸入グリーンは他国のFIT電力でもいい)です。グリーン電力だけを供給している会社であれば、引当金を準備しておく必要はないので、引当金は徴収されていないと思います。でも原子力電力も供給している会社であれば、その会社がグリーン電力商品を持っておれば、グリーン電力商品であっても確実に引当金が上乗せされていると思います。それは、経営モラル上問題あるかもしれませんが、会社経営上だけの問題で、企業側の裁量に任されているはずです。



 さらに問題になるのが、この引当金を集めるのをいつまで続け、電気料金のどの程度の割合を占めるのかという問題です。これは、多分電力各社の経営裁量に任されていると思います。そこまでは、法的規制されていないと見ています。

 ドイツでは電力市場の自由化で、発電、送電、小売りが別会社化されています。それで、送電される電力には託送料が加算されます。

 ドイツでは第2章で書いたように、自由化後に託送料でいろいろ問題がありました。規制機関ができてからはその問題が解消されてきましたが、電力料金に占める託送料の割合が益々大きくなっています。その公平さは規制機関がチェックしているはずなので、ドイツでは何でも上乗せしてしまう日本のようにはなっていないと信じたます。ドイツの託送料の高騰は、送電会社の送電網整備に負担が増えているからだと思います。引当金は、託送料の中には含まれていないと思います。

 ただ電力市場はとても複雑なので、外から見ると、実際どうなっているのかはまったく霧に包まれた状態でわからないのも事実です。

 だからこそ、原子力とない関わりのないグリーン電力を市場で販売するには、ドイツのようにグリーン電力商品を認証する仕組みが大切だともいえます。



まさお

2017年11月27日月曜日

セカンドハンドの食品を販売

 第4章では、スーパーなどで売れ残った食品を生活保護を受ける人やホームレスに配給したり、スープなどにして炊き出していることを書きました。

 ベルリンでは10月に、ベルリンの商店街の一つヴィルマースドルファー通りに、スーパーなどで売れ残ったり、賞味期限の切れたセカンドハンドの古い食品だけを販売するお店ジルプルス(SirPlus)がオープンしました。オープン後、レジに長蛇の列ができるほどの繁盛ぶりです。オンラインで注文すれば、デリバリーサービスもしてくれます。

 リンゴなどは多少古くなっていても、まったく問題ありません。古いトマトは悪くなっている部分を結構切り捨てますが、それでもかなり割安に感じます。パンも古くてもまったく問題ありません。少し水を吹き付けてトースターかオーブンで焼けば、新鮮なパンと変わりません。

 スーパーなどに比べると格段に安い物が多いし、収穫された農産物をより有効に消費することになるので、この種の小売店が今後トレンドになっていく可能性があります。

 この種のお店はもっと早くからあるべきだったのですが、ちょっと気になることもあります。セカンドハンドの食品は、第4章でも書いたように、大都市では生活保護者やホームレスにとってはとても貴重な食糧です。それが、一般消費者にも買えるようになって、生活保護者やホームレスに渡る分が不足してはなりません。

まさお








2017年11月13日月曜日

地道に民意を広げるしかない

 ぼくはこの「エネルギー選択宣言」において、脱原発とエネルギー転換に向けて市民として生活の中で何ができるのかを書いてきたつもりです。市民一人一人が自分の生活でできることを自分で考え、一人でも多くの人に実行してほしいという期待も込めました。「エネルギー選択宣言」がそのきっかけをもたらしてくれれば、筆者としてはたいへんうれしく限りです。

 それがですね、日本で脱原発と自然エネルギーの促進に向けて一所懸命活動している人自体が「エネルギー選択宣言」を読んでこういうのです。

 「これまで消化不良だったところがすっきり解消されたような気分です」

 そこまではよかったのですが、ところが、次に「でも」ではじまって、「日本では意識が低くてだめでしょうね。特に若い世代が」と。

 ぼくは、正直びっくりしました。活動している人自体が、日本人は意識が低いから、自分で何かをして社会を変えようとはしないと信じてしまっているのです。

 でもそれなら、一体何のための活動なのか、何も変わらないのではないのかといいたくなります。単に政府の政策に反対するだけではなく、一般市民が一人でも多く、このままではダメだと目覚めてこない限り、何も変わらないと思います。

 目覚めるきっかけをもたらすのが、活動ではないのでしょうか。

 それに対して、この9月にロンドンの日本人の人たちと一緒にスカイプでまず「日本と再生」という映画を見て、その後に質疑に答えたのですが、小生の「エネルギー選択宣言」を事前に読んでいた方がいて、「ハッとすることがたくさんありました、自分の生活でもやれることがあることがわかったので、やってみたいと思います」とコメントしてくれました。
 
 ヨーロッパにいると、周りの社会には市民自ら動いている人が多いので、自然とそう思うのかもしれません。

 でも、そう断言したくはありませんし、ヨーロッパと日本の市民の比較もしたくありません。ぼくの基本は、あくまでも一人一人が生活の中で自分で考えていくことです。それ以外に、議論するつもりはありません。

 実際日本でも現場にいけば、生活の中から変えていこうとがんばっていらっしゃる人に何人も会ってきました。

 何はともあれ、地道に進むしない。それが、「エネルギー選択宣言」のメッセージでもあります。

まさお

2017年8月14日月曜日

メールのやりとり締めくくり

 メールでのやり取りは、以下のメールで終わりになりました。

まさお


2017年5月19日
読者B

 Aさんは私のような素人の話も聞いて下さってありがたいことです。日本のある大学では私のよ うな者が教授の間違いなどを指摘すると,「失礼な人間」ということになりました。私は個人的に呼び出されて,「学生の前で教授の間違いは指摘しないこ と」,などという注意を受けたことがあります。(一方,私の経験ではドイツの大学で教授の間違いを指摘すると,お礼を言ってもらえました。それ以来,「失 礼な」という人間はほとんどの場合,三流の人間だとわかったのです。)

 私もふくもとさんの記事は少なくとも 2 度読みました。自分が勝手に思っていたことと,法律や市場の定義などがずいぶん違うためにそれを整理することがひとつです。たとえば,私は FIT というものは,政府が税金から補助金を出すような,助成金の一種と勝手に誤解していました。そう考えていると,それぞれの意味がわからなくなります。ま た,ふくもとさんの記事では,ここは普通の常識と違う,だけではなく,それがなぜなのかの説明があることがとても助かりました。

 ほかの このような解説記事には,簡単さを売りにして,わかったような気になる甘い砂糖菓子のようなものが散見されます。しかし,砂糖菓子ばかり食べていては健康 を損うように,結局わかっていないことになります。そうすると議論にはならず,感情だけになって分断がすすんでしまいます。しっかりと血肉になるものを噛 んで食べることも必要な中,それに答えるような記事を提供して下さって感謝します。

 読む時に自分の考えていたことだけを確認するような 薄い記事ではなく,自分が,「ああ,これはわかっていなかった。」という世界を広げてもらえる記事というのはなかなかありません。そういう意味でも私には とても面白い記事です。難しさはありますが,素人にも読めるものだと思います。

ことばの定義

 メールでのやりとりの問題は、ことばの定義の問題でもあります。そこには、自分勝手な定義で議論していては議論が進展せず、不毛になりかねないこともわかってきました。

まさお


2017年5月18日
読者B
 言葉の定義をもっと respect して議論して頂けると助かります。そうでない限り,私もメイルでの議論は不毛にしかならないと思います。

 Aさんが個人的にこう思っているという意味と,法律での定義,あるいは市場での意味が違う場合,個人的に思っていらっしゃる言葉を使っても説明が理解できないのは当然ではないでしょうか。

 市場での「先物」の意味も市場での定義と違うようです。将来に買うか買わないかどうかは単なる契約です。CD などを予約して明後日買うというは先物とは関係ないことですし,来月も私は電気料金を払うということも先物とは関係ないことですが。。。しかし,先物の定義とかファイナンスの基礎の話になってもしかたがないです。

 かなり不毛になってきた感じがします。

2017年5月19日
読者B
 どうも先のメイルは何か責めているようなメイルになってしまってすみません。疑問がでることはいいのですが,定義がそれぞれ違うことをもとに議論することは難しいと思うので,ちょっと定義に戻ってみてはということです。

 実は,私自身,市場で何が先物として取引されるものかどうか,それが可能かどうかについては存じません。

 しかし,いくつかの定義が合意されていないまま話がすすんでいるようです。その一つと私が思っているのは,たとえば,先物の定義です。市場では,先物とは私の知る限り,「将来に何かを買うという権利の取引」です。「将来に何かを買うということではない」です。

 市場では,10 ユーロの価値はいくらかというようなものが取引されます。10ユーロの価値は 10 ユーロとは限らないから 10 ユーロの価値がいくらかという話になります。この意味がおわかりならば,次の説明は飛ばして下さい。

 一番簡単な例は,今日私の持っている 10 ユーロは,1ヶ月に 10 % の利子をとれば, 1 ヶ月後には 11 ユーロになりますので,今日の私の 10 ユーロの1 ヶ月後の価値は 11 ユーロになります。つまり,この仮定のもとでは,一ヶ月後の 10 ユーロは,今日の 10 ユーロよりも価値が低いです。ですから,先物では電力を買う (たとえば 10 ユーロ) の契約の価値が,20 ユーロだったりします。将来に買うということと,その買う権利の取引はまったく異なるものです。

 電力市場で取引されている商品が実際にどんなものかは私は詳しくありませんが,少なくとも,電力を買うということと同じというふうに考えているとすると,意味がとれないと思います。

 市場の話は人間が決めたことが多く,言葉の定義を丁寧に読まないと難しいとは思います。グレー電力の定義,グリーンエネルギーの定義,先物とは何か,それらは市場でしか通用しない言葉ですが,しかし,定義されています。それをふくもとさんが定義はこうです,と説明して,いや私はそうは思わないのですが,という話になると話が通じなくなります。ふくもとさんが,「ドイツでは」などと強調されるのも,市場での言葉の定義が国によって異なるからでしょう。

 私が太陽電池で作ったエネルギーは私はグリーンエネルギーだと思っています。しかし,環境庁が私のパネルを再生可能エネルギー施設とは認定していませんから,市場ではグリーンエネルギーではありませんし,そもそもこれは市場には存在すらしていません。つまり,私が自分の買った太陽電池パネルで作っている電力を私がグリーンエネルギーだと思っていることは,市場での取引には何の関係もないし,市場では間違いです。ですからこれを市場でどうかという意味はありません。しかし,誰かが電力を買ったり負担をするしくみを考える時には,この定義に従って議論しないと意味がありません。

 言葉の定義を respect して欲しいというのはこのような意味です。いかがでしょうか。

 また,このような財政の基礎の入門については私はビデオコースを作ってYouTube 上に置いてありますので,もし興味があったらどうぞ。

読者A
 相手のことを思ってくれて、どうも有難う。ふくもとさんには僕のしつこい質問ぜめにも丁寧に答えてくださって、とても感謝しています。

 僕にはまだ電力市場の世界が「群盲象を撫でる」に近い存在なのです。多少は分かっていたつもりになっていたら、ふくもとさんのブログを読んで、グレー電力、グリーン電力が僕の理解と違っていたので、ショックを受けて調べ始め、また考え始めました。電力の先物買いも取引所では行われていると知っていましたが、再生可能エネルギー電力ではできないと言われて、僕の先入観がおかしいということになり、SEWのスラデックさんなどにも聞いてみたわけです。

 時間もできた(先週はグラーツで通訳)ので、まずはふくもとさんの「エネルギー選択」を最後まで読んでみます。その上で僕なりにまとめてみて、質問があれば、またお願いします。