2017年12月31日日曜日

バイオマス発電はベースロード電力というミスリード

 第4章では、ドイツでのバイオガス発電のことについて書きました。

 それに対して日本では、バイオガス発電ではなく、再生可能エネルギーの中でもバイオマス発電が発電量に変動がなく常に同じ量発電できることから、バイオマス発電がベースロード電力に適していると思われているように思います。

 ぼくはドイツでの経験からすると、これはミスリードになると思います。それには、いくつか理由があります。

 まず、バイオマス発電は発電コストが比較的高く、ベースロード電力を供給するには競争力がありません。バイオマス発電のために、木材を特別に加工したりしているとまったく採算性が合いません。森林や林業で排出される木の廃材やくずをバイオマス発電の燃料にしないと発電コストが下がりません。しかし、それでは燃料供給が大きく制限されます。

 もう一つ大きな問題は、再生可能エネルギーの中でも風力発電や太陽光発電には燃料が必要ありません。燃料コストなどは専門的に限界費用といわれますが、その限界費用がないのが特徴です。それでは、燃料の必要なバイオマス発電は競争に勝てません。

 電力市場では、この限界費用で電力を取引する価格が決まっていきます。ということは、風力や太陽光で発電された電力のほうが市場では安いのです。そのため、発電量に変動があっても、安い電力から売買され、使われていきます。これは、今後ベースロード電力という考えた方を変えていかなければならないことも示唆しています。将来ベースロード電力という考え方そのものがなくなり、需要を満たす電力を供給することだけを主体に考えていくことになると思います。

 そうなると、バイオマス発電は風力や太陽光で発電された電力では需要を満たせない時にその需要をカバーするために電力を供給する役割を担うしかありません。ただ、風力発電や太陽光発電の発電量は変動が大きく、さらに需要も変動しましす。しかし、バイオマス発電は木質の燃料を燃やして発電するので、発電量を柔軟にコントロールすることができません。

 それに対してバイオガス発電の場合、ガスを燃料にするので発電量をすばやく柔軟に調整でき、需要の変動に対応しやすいという利点があります。発電する必要のない時は、発生するガスを貯蔵しておくこともできます。

 バイオガス発電も発電コストが比較的高いのですが、需要に合わせて電力を供給できるので、そういう目的に使われる電力は比較的高く取引できます。こういう利点もバイオガス発電にあります。

 そのため、ドイツではバイオマス発電では、バイオガス発電が主流になっています。

 日本でも、この実態を知ってもらいたいと思います。

まさお

2017年12月26日火曜日

シュタットヴェルケは、エネルギー総合企業

 第1章で、ドイツには各地に「シュタットヴェルケ」と呼ばれる都市電力公社がたくさんあると書きました。ただ、「シュタットヴェルケ」を「都市電力公社」とするのは必ずしも正しくはありません。電力会社に関することなので、「電力」と入れましたが、「都市エネルギー公社」というするほうがよかったと思います。

 というのは、シュタットヴェルケは単に発電するばかりでなく、発電によって得られる熱を地域熱源として産業用や一般世帯の暖房、給湯用に供給しているからです。それは、コジェネレーションシステム(熱電併給システム)を使っているから可能になります。

 シュタットヴェルケによっては、天然ガスを供給しているところもあります。シュタットヴェルケがバイオガス発電をやれば、ガスの再生可能エネルギー化も促進できます。その事例については、ベルリン@対話工房のサイトに記事をアップしました(「都市電力公社もバイオガス発電」を参照。さらに、地域熱源の供給については「地域熱源で熱を供給」も参照)。

 またバス、トラム、地下鉄など公共交通を運用しているシュタットヴェルケもあります。

 シュタットヴェルケは、エネルギーに係ることなら何でやっている、やれるということです。それが、シュタットヴェルケのエネルギー転換に向けた強いところです。

 というのは、将来再生可能エネルギー化を進めるには、エネルギーを必要とする分野を連携してエネルギーをシステム化させて使うことがとても重要になるからです。

 すでに述べたように、電力と熱の供給はコジェネーションシステムによって行なわれています。生物資源を発酵させてバイオガスを回収してそのガスをガス網に供給すれば、ガスの再生可能エネルギー化が行なえます。バイオガスのメタン濃度を高めれば、自動車の燃料にも使えます。

 あるいは電気自動車が普及すれば、電気自動車の電池をつなげて地域の蓄電池として利用することも可能になります。なお電気自動車については、シュタットヴェルケがバスの電気自動車化を進めれば、その先駆者になれます。

 地域の配電網を所有するシュタットヴェルケが多いだけに、シュタットヴェルケはエネルギー利用全体をシステム化するのに最も適した位置にいるといっても過言ではありません。

 電気やガス、熱の需要が常に一定ではないので、エネルギーの需要者が多種多様であるほうが、エネルギー需要の変動を少なくすることができます。エネルギーが余れば、地域でまとめて貯蔵することもできます。電気が余れば、その電気でお湯をわかし、それをタンクに貯蔵します。あるいは、電気を使って水を電気分解させれば水素ができます。その水素は、自動車や発電用の燃料電池の燃料として使えます。また水素をメタン化すれば、そのガスをガス網に供給できます。

 このようにエネルギーを柔軟に利用するには、エネルギーすべてを運用しているほうが実現しやすいのです。

 ドイツでは、民間企業に売却されてしまったシュタットヴェルケもありますが、まだ多くは自治体の所有となっています。自治体所有であれば、シュタットヴェルケの事業の一部を組合化させてエネルギー事業への住民参加も促しやすい地盤があります。

 ドイツにはすでに、エネルギーの利用を各分野で結び付けるシステム提供企業へ脱皮しようとしているシュタットヴェルケがいくつもあります。シュタットヴェルケが今後の再生可能エネルギー化に向けて重要なインフラになるのは間違いありません。

 日本には、ドイツのシュタットヴェルケのようなものがないだけに、それに代わるものを自治体などが立ち上げていけるのかどうか。それが、日本にとってとても大切だと思います。

 その第一歩は、まず小さな地域単位で配電網を公営化することではないか。ぼくはそう思っています。

まさお

2017年12月17日日曜日

ドイツの組合は、世界無形文化遺産

 7章「住宅の未来」では、地元の電力公社が再生可能エネルギー化において住民参加を促すため、組合を設置したことについて書きました。その他再生可能エネルギーの分野では、住民が共同で発電施設を設置し、その事業者組織として組合を設立するケースが増えています。集合住宅でも、共同で発電、熱供給する住民組織として組合を選ぶケースも増えています。

 ドイツでは、伝統的に集合住宅を建設、管理する住民の自治組織として組合が普及しています。元々は、19世紀中頃に農家を支援する銀行として組合銀行が設立されたのが組合の最初だったといわれます。

 組合というのは、住民が連帯して自助組織として自己責任、自己管理を行なう組織です。住民の資金力とは関係なく、住民1人1人が資本の力から独立して自己判断、自己決定して住民自治を実現するためのものです。

 組合員は、組合員としていくら出資していようが、組合員1人には1票の投票権しか与えられません。出資額とは関係なく、組合員は常に平等に扱われます。それが、組合の一つの魅力です。

 ドイツでは、組合のアイディアが19世紀中頃から今も続いています。それがさらに、エネルギーの分野にも広がり、エネルギーを住民が自治管理する基盤にもなってきました。

 そのドイツの組合は2016年11月、ユネスコの世界無形文化遺産に認定されました。

 ぼくは、市民が再生可能エネルギーをより連帯して共同利用していく上で、組合がとてもたいせつな枠組みだと思っています。そこには、資本主義に変化をもたらすインパクトがあります。

まさお

2017年12月10日日曜日

送電網整備のコストは社会コストだ

 第2章で書いたように、ドイツではエネルギーを風力、太陽光などの再生可能エネルギーに転換することで、送電網の整備が重要な課題となっています。本文では、まずそのためにドイツでは約3兆円必要だと見積もられていると書きました。

 とてつもない高額の経費です。

 送電網の整備が必要になっている一つの大きな要因は、ドイツ北部の北海とバルト海でしか実現できない洋上風力発電です。そこで発電された多量の電気を南部に送電しなければなりません。そして、その洋上風力を進めるのは、洋上風力のように莫大なコストのかかる大きな設備を建設しないと大手電力が再生可能エネルギーに進出できないからです。

 本来、再生可能エネルギーは小型の発電設備を分散させ、地産地消するのが基本です。でもそれでは、大手電力がビジネスできません。送電網整備に莫大な投資をしなければならないのは、大手電力の救済措置だともいえると思います。

 もう一つ。鉄道や道路、空港は公共性があるからと、そのために国の予算から莫大な助成金が出されています。たとえば鉄道には、日本では毎年1500億円前後の助成金が出されています。たとえば新幹線網の整備には、これまでたくさんのお金が税金から出されてきました。さらに現在、採算性の見込みのないリニアモーターカー専用線の建設もはじまっています。

 道路においては、地方でまったく必要ない道路がたくさん建設され、そのためにたくさんのお金が助成されています。地方には建設業以外に産業がないので、土建業のために税金を出しているということです。

 高速道路も整備されてきました。それに伴い、高速で走る自動車も開発されてきました。その恩恵を受けてきたのは誰でしょうか。自動車メーカーです。

 空港にも、同じことがいえます。

 しかし、鉄道や道路、空港に税金から投資することに反対する声は、小さいのではないでしょうか。でも送電網と比較すると、どちらが公共性が高いのでしょうか。電力市場が自由化され、さらに自宅の屋根に太陽光パネルを設置して発電された電力を公共送電網に供給する市民が増えています。それを考えると、送電網の公共性は益々高くなっていくと思います。

 もう一つ考えてもらいたいのは、直接助成はされていないが、間接的に助成されているか、単に一般市民の負担になっているだけのコストです。

 道路が整備されて、自動車が増えています。同時に、それによる公害も増えています。その結果、ぜんそくなどの病気が増えています。そのコストは、一体誰が負担しているのでしょうか。国か一般市民です。

 こういうコストを社会コストといいます。社会コストは、実際の経済活動とは直接には関係ありませんが、経済活動の結果として発生する影響に対してコストが発生します。それが社会コストです。社会コストは、経済活動に対する隠れたコストだといっても過言ではありません。でもそのコストは、経済界は負担しません。

 福島第一原発の大惨事のコストは誰が負担しているのでしょうか。表向きは東電です。でも東電が国営化されている以上、そのコストは国家予算、つまりは納税者負担です。

 こうしてぼくたちは、社会コストという経済活動の隠れたコストを負担しています。

 でも、エネルギーがクリーンな再生可能エネルギーに転換されていくにしたがって、公害やその他の災害によって発生する社会コストは減っていきます。

 ぼくは、公共性の高さを考えると、送電網整備のコストはエネルギーをより広く市民のものにするための社会コストだと思います。なので、送電網の整備に莫大なコストがかかるからと単純に再生可能エネルギーに反対する意見は、理にかなっていないと思います。

 さて、みなさんはどう思いますか。

まさお

2017年12月3日日曜日

FIT電力にも、原発のための引当金を上乗せ

 本サイトでバックエンド引当金の問題を取り上げてきました。引当金は電力料金に上乗せされて徴収されており、ここでも関係あることなので、同ブログでも取り上げておきたいと思います。

 第1章で書いたように、ドイツではFIT電力は通常の電力として扱われています。つまり、火力発電、原子力発電された電力と区別されません。そのため、FIT電力にも原発の廃炉や最終処分のために積み立てておく引当金分が上乗せされている可能性があります。

 FIT電力を通常電力扱いすることでFIT制度による負担を全体に分配しているわけなので、原子力の負担も全体でという論理になりますかね。

 もちろんFIT電力に特化した発電事業者は引当金を上乗せする必要はなく、原子力発電する事業者だけが上乗せします。送電段階では、電力の区別はできなく、販売する電力にはすべてFIT電力が入っているとされる以上、送電会社から小売り業者に引き渡される段階では、FIT電力にも引当金が入ってしまっている可能性がかなり大きいと思います。

 特に原子力発電している大手電力は、当然のことながらFIT電力にも引当金を上乗せしていると思います。

 現在、電力商品に含まれているFIT電力の割合は平均で30%余りです。ぼくはグリーン電力を供給してもらっていますが、残りの70%弱はドイツでFIT外で発電されたグリーン電力か輸入グリーン電力(輸入グリーンは他国のFIT電力でもいい)です。グリーン電力だけを供給している会社であれば、引当金を準備しておく必要はないので、引当金は徴収されていないと思います。でも原子力電力も供給している会社であれば、その会社がグリーン電力商品を持っておれば、グリーン電力商品であっても確実に引当金が上乗せされていると思います。それは、経営モラル上問題あるかもしれませんが、会社経営上だけの問題で、企業側の裁量に任されているはずです。



 さらに問題になるのが、この引当金を集めるのをいつまで続け、電気料金のどの程度の割合を占めるのかという問題です。これは、多分電力各社の経営裁量に任されていると思います。そこまでは、法的規制されていないと見ています。

 ドイツでは電力市場の自由化で、発電、送電、小売りが別会社化されています。それで、送電される電力には託送料が加算されます。

 ドイツでは第2章で書いたように、自由化後に託送料でいろいろ問題がありました。規制機関ができてからはその問題が解消されてきましたが、電力料金に占める託送料の割合が益々大きくなっています。その公平さは規制機関がチェックしているはずなので、ドイツでは何でも上乗せしてしまう日本のようにはなっていないと信じたます。ドイツの託送料の高騰は、送電会社の送電網整備に負担が増えているからだと思います。引当金は、託送料の中には含まれていないと思います。

 ただ電力市場はとても複雑なので、外から見ると、実際どうなっているのかはまったく霧に包まれた状態でわからないのも事実です。

 だからこそ、原子力とない関わりのないグリーン電力を市場で販売するには、ドイツのようにグリーン電力商品を認証する仕組みが大切だともいえます。



まさお